渋谷のイメージフォーラムで「ルルドの泉で」http://lourdes-izumi.com/を観た。

フランスの聖地、ルルドの泉にやって来た巡礼の一行。数日にわたって泉の水を飲んだり沐浴したり、ミサに授かったり周辺の霊験があるとされるところを巡ったりして過ごす。病気治癒を必死に願い祈る人、寂しさを紛らすために来た老人、ここで起きた奇跡を胡散臭く思っている観光目的の中年婦人。彼らを世話するボランティアの中にも、心から手助けをしようと考えている人、生活のための仕事のように淡々と接する人、自分の抱えている重い病気を隠して献身的につくす人、仕事を中断して他のボランティア青年たちと遊んでしまう若い女などさまざまな姿が見られる。

そんな中で、多発性硬化症で四肢が不自由なクリスティーヌに奇跡が起こる。自分で立って歩けるようになり、ボランティアの青年と恋までする。彼女の回復を見て人々は祝福するが、特別信仰が篤いわけでもなさそうなクリスティ－ヌの奇跡に嫉妬の目を向ける人もいれば、一時的な回復で再発は免れないと奇跡を疑う人もいる。クリスティーヌ自身も、なぜ自分が神に選ばれたのか分からずに途惑い、再発に怯える。

映画はそこで終わり、これが本当の奇跡＝快癒なのか、あるいは再発してしまうのかは示されない。ラストでは「Felice（おめでとう）」と繰り返す歌が流れるのだが。

医者にも見離された人々が最後の望みを託して訪ねる「奇跡の地」。奇跡が訪れることがなくても、信仰の地の空気に包まれて他の巡礼者やボランティアの人々と接することで癒されることはあるだろうから、ルルドをあえて全否定する必要はない。しかし健常者である神父がクリスティーヌに諭す「神が与えた運命を受け入れなければならない」「健常者が必ずあなたより幸せと言えるでしょうか」というような言葉は、あまりに残酷ではないか。

クリスティーヌがその後どのような人生を送るのか。神から選ばれた自身をどのように消化してゆくのか、あるいは再発したときに神の意思をどう理解してゆくのか。それは観る者に委ねられ、あらためて信仰について考えさせられる作品だ。

por Andrés

Andres y Amelia映画・テレビ渋谷のイメージフォーラムで「ルルドの泉で」http://lourdes-izumi.com/を観た。 フランスの聖地、ルルドの泉にやって来た巡礼の一行。数日にわたって泉の水を飲んだり沐浴したり、ミサに授かったり周辺の霊験があるとされるところを巡ったりして過ごす。病気治癒を必死に願い祈る人、寂しさを紛らすために来た老人、ここで起きた奇跡を胡散臭く思っている観光目的の中年婦人。彼らを世話するボランティアの中にも、心から手助けをしようと考えている人、生活のための仕事のように淡々と接する人、自分の抱えている重い病気を隠して献身的につくす人、仕事を中断して他のボランティア青年たちと遊んでしまう若い女などさまざまな姿が見られる。 そんな中で、多発性硬化症で四肢が不自由なクリスティーヌに奇跡が起こる。自分で立って歩けるようになり、ボランティアの青年と恋までする。彼女の回復を見て人々は祝福するが、特別信仰が篤いわけでもなさそうなクリスティ－ヌの奇跡に嫉妬の目を向ける人もいれば、一時的な回復で再発は免れないと奇跡を疑う人もいる。クリスティーヌ自身も、なぜ自分が神に選ばれたのか分からずに途惑い、再発に怯える。 映画はそこで終わり、これが本当の奇跡＝快癒なのか、あるいは再発してしまうのかは示されない。ラストでは「Felice（おめでとう）」と繰り返す歌が流れるのだが。 医者にも見離された人々が最後の望みを託して訪ねる「奇跡の地」。奇跡が訪れることがなくても、信仰の地の空気に包まれて他の巡礼者やボランティアの人々と接することで癒されることはあるだろうから、ルルドをあえて全否定する必要はない。しかし健常者である神父がクリスティーヌに諭す「神が与えた運命を受け入れなければならない」「健常者が必ずあなたより幸せと言えるでしょうか」というような言葉は、あまりに残酷ではないか。 クリスティーヌがその後どのような人生を送るのか。神から選ばれた自身をどのように消化してゆくのか、あるいは再発したときに神の意思をどう理解してゆくのか。それは観る者に委ねられ、あらためて信仰について考えさせられる作品だ。 por Andrés退職者夫婦の旅と日常（スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・）