夕食に下りると、会場は庭に設置されたドーム。鉄パイプで組まれたドーム状の枠に透明なビニールのカバーをかけたもので、直径は5mほどだろうか。庭には5個のこの半球状の透明テントが設置されている。その脇にキッチンカーが停めてあり、ウエイター1名、コック1名でサービスしてくれる。料理はmenúではなくアラカルト。とは言っても流石に料理の種類は多くない。テンプラ、サラダ、アンコウのフライを頼む。飲み物は赤と白のワインをグラスで、それにagua con gas。

ドームにも庭にも電飾が灯され、雰囲気は盛り上げられている。ただ、風が非常に強く、ドームが吹き飛ばされる心配はないものの、キッチンカーの扉の方は途中で半分閉められた。雨が降ったらどうするのかと思っていたら、案の定強く降り出してしまい、ウエイターは慌てて傘を取りに行っていた。幸いすぐに小雨になったので、料理を運ぶのに支障は出なかったが。

突出しに生ハムと卵で作ったチュパチップスのような形のもの。

テンプラは揚げ加減も良く、美味しかった。「なんちゃって和食」と違って、テンプラはスペイン料理の一部になっているよう。

サラダはensaladilla にしてちょっと失敗。美味しいのだが、あっさりしたensalada mixtaにすべきだった。

最後はアンコウのフライ。これも美味しかったが、揚げ物続きになってしまった。

ウエイターがデザートをどうするか聞きに来た時、コーヒーだけにしようか迷っていると、突然Ameliaの様子がおかしくなった。迷っていて返事をためらっているのかと思っていたら、目を剥き顔色が青白くなり、椅子からずり落ちそうになった。慌てて身体を支え、「どうした?」と何度も声をかけながら頬を叩くが、返事がない。ほんの数秒のことだったが。すぐに意識が戻って吐きそうにするが、床やテーブルを汚したくないという気持ちが先立つのか、差し出した紙ナプキンに少し戻しただけ。椅子を並べて横にすると、目をつぶり静かになるが、意識がなくなっているのか眠っているのか目を閉じているだけなのか、区別のつきにくい状態が続く。

Camareroが医者を呼ぼうかと尋ねてくれたので、Ameliaは必要ないと言うが、呼んでもらうことにした。10分ほどで救急車が到着。翻訳アプリも併用しながら病状を説明。病院に連れて行くということになり、私とAmeliaのバッグと上着を持って救急車に乗り込む。Ferrolの病院に行く。車内でAmeliaのパスポートを預ける。救急車に乗る前にいくらか吐いて少しは楽になった様子だが、うとうとしていて、意識がはっきりしているようには見えなかった。救急車の乗り心地は、日本のよりクッションが効いていてガタつきが少なかった。

病院に着くとまず医者が診察。問診と血圧、血中酸素濃度、脈拍を調べる。血圧が、上が80下が50代と非常に低くなっている。状況をAmelia自身で説明できるようになっていた。その後、ストレッチャーに乗せられたまま患者の待合室に連れて行かれるが、混んでいて廊下で待たされることになる。

1時間以上待っただろうか、ようやく診察室に運ばれるが、そこでもずいぶん待たされる。やっと医者が来て診察。問診や聴診器での診察、血圧測定。血圧はまだ低いまま。

しばらく待たされて、検査のための血液採取。そして点滴。生理食塩水に、薬剤一本を併用。さらに注射器でもう一種の薬剤注入。点滴が終わるまで1時間以上待って、ようやく医者がやって来て、診断を伝えてくれた。血圧もほぼ正常に戻ったので帰宅してよい。消化不良だったと思われるので、一度に大量に食べるのは控え、少しずつ分けてゆっくり食べるように。食後も急に動かないようにとのことだった。検査結果では他は全て正常なので心配ないとのこと。良かった。意識を失った時には脳出血などを心配してしまった。

診断結果を記入した用紙をもらい、着替えを済ませて出入口の受付でタクシーを呼んでもらってホテルに戻った。

救急車に乗り込む前にCamareroから連絡用の名刺をもらい、玄関を開けておく旨を伝えられていたので、問題なくホテルに入れた。22時過ぎに救急車に乗り、ホテルに戻ったのは午前4時ごろだった。

病院では適当な椅子がなくて半分以上立って待っていたので疲れた。Ameliaはほとんど眠っていたので、ホテルに戻るとシャワーを浴びていた。

救急車はもちろん、病院でも料金の請求はなかった。後から来るのかもしれないが、その場で料金を払えないと救急車で運んでもらえず、保険によっては病院にも受け入れてもらえないアメリカ合衆国と比べ、1ユーロもなくても救急診療を利用できるスペインは優れていると言える。私たちは保険料はもちろん払っていないにも関わらずだ。確かに病院ではずいぶん待たされたが。

 

/images/2022/11/ad0ef389e60a1db42eb4ec7cc1f9eb7f-700x1245.jpg/images/2022/11/ad0ef389e60a1db42eb4ec7cc1f9eb7f-150x150.jpgAndrésイギリス人の道Camino de Satiago,Camino Inglés,Neda,イギリス人の道,サンティアゴ巡礼,スペイン,救急病院,救急車夕食に下りると、会場は庭に設置されたドーム。鉄パイプで組まれたドーム状の枠に透明なビニールのカバーをかけたもので、直径は5mほどだろうか。庭には5個のこの半球状の透明テントが設置されている。その脇にキッチンカーが停めてあり、ウエイター1名、コック1名でサービスしてくれる。料理はmenúではなくアラカルト。とは言っても流石に料理の種類は多くない。テンプラ、サラダ、アンコウのフライを頼む。飲み物は赤と白のワインをグラスで、それにagua con gas。 ドームにも庭にも電飾が灯され、雰囲気は盛り上げられている。ただ、風が非常に強く、ドームが吹き飛ばされる心配はないものの、キッチンカーの扉の方は途中で半分閉められた。雨が降ったらどうするのかと思っていたら、案の定強く降り出してしまい、ウエイターは慌てて傘を取りに行っていた。幸いすぐに小雨になったので、料理を運ぶのに支障は出なかったが。 突出しに生ハムと卵で作ったチュパチップスのような形のもの。 テンプラは揚げ加減も良く、美味しかった。「なんちゃって和食」と違って、テンプラはスペイン料理の一部になっているよう。 サラダはensaladilla にしてちょっと失敗。美味しいのだが、あっさりしたensalada mixtaにすべきだった。 最後はアンコウのフライ。これも美味しかったが、揚げ物続きになってしまった。 ウエイターがデザートをどうするか聞きに来た時、コーヒーだけにしようか迷っていると、突然Ameliaの様子がおかしくなった。迷っていて返事をためらっているのかと思っていたら、目を剥き顔色が青白くなり、椅子からずり落ちそうになった。慌てて身体を支え、「どうした?」と何度も声をかけながら頬を叩くが、返事がない。ほんの数秒のことだったが。すぐに意識が戻って吐きそうにするが、床やテーブルを汚したくないという気持ちが先立つのか、差し出した紙ナプキンに少し戻しただけ。椅子を並べて横にすると、目をつぶり静かになるが、意識がなくなっているのか眠っているのか目を閉じているだけなのか、区別のつきにくい状態が続く。 Camareroが医者を呼ぼうかと尋ねてくれたので、Ameliaは必要ないと言うが、呼んでもらうことにした。10分ほどで救急車が到着。翻訳アプリも併用しながら病状を説明。病院に連れて行くということになり、私とAmeliaのバッグと上着を持って救急車に乗り込む。Ferrolの病院に行く。車内でAmeliaのパスポートを預ける。救急車に乗る前にいくらか吐いて少しは楽になった様子だが、うとうとしていて、意識がはっきりしているようには見えなかった。救急車の乗り心地は、日本のよりクッションが効いていてガタつきが少なかった。 病院に着くとまず医者が診察。問診と血圧、血中酸素濃度、脈拍を調べる。血圧が、上が80下が50代と非常に低くなっている。状況をAmelia自身で説明できるようになっていた。その後、ストレッチャーに乗せられたまま患者の待合室に連れて行かれるが、混んでいて廊下で待たされることになる。 1時間以上待っただろうか、ようやく診察室に運ばれるが、そこでもずいぶん待たされる。やっと医者が来て診察。問診や聴診器での診察、血圧測定。血圧はまだ低いまま。 しばらく待たされて、検査のための血液採取。そして点滴。生理食塩水に、薬剤一本を併用。さらに注射器でもう一種の薬剤注入。点滴が終わるまで1時間以上待って、ようやく医者がやって来て、診断を伝えてくれた。血圧もほぼ正常に戻ったので帰宅してよい。消化不良だったと思われるので、一度に大量に食べるのは控え、少しずつ分けてゆっくり食べるように。食後も急に動かないようにとのことだった。検査結果では他は全て正常なので心配ないとのこと。良かった。意識を失った時には脳出血などを心配してしまった。 診断結果を記入した用紙をもらい、着替えを済ませて出入口の受付でタクシーを呼んでもらってホテルに戻った。 救急車に乗り込む前にCamareroから連絡用の名刺をもらい、玄関を開けておく旨を伝えられていたので、問題なくホテルに入れた。22時過ぎに救急車に乗り、ホテルに戻ったのは午前4時ごろだった。 病院では適当な椅子がなくて半分以上立って待っていたので疲れた。Ameliaはほとんど眠っていたので、ホテルに戻るとシャワーを浴びていた。 救急車はもちろん、病院でも料金の請求はなかった。後から来るのかもしれないが、その場で料金を払えないと救急車で運んでもらえず、保険によっては病院にも受け入れてもらえないアメリカ合衆国と比べ、1ユーロもなくても救急診療を利用できるスペインは優れていると言える。私たちは保険料はもちろん払っていないにも関わらずだ。確かに病院ではずいぶん待たされたが。  退職者夫婦の旅と日常(スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・)