ポール・フルネル「編集者とタブレット」東京創元社
老編集者が原稿の束と格闘し馴染みのレストランでワインと食事を共にしながら著者と打ち合わせする生活から、コーラかビールとハンバーガーで暮らす若い人たちとタブレットに保存されたデータでやりとりするスタイルに移り変わる時代の中を、戸惑いながらも飄々と切り抜けている姿を時にコミカルに描いている。主人公は時代の変化を認めつつも、最後に端末のバッテリーが切れて行くのを待って書物の世界に戻り結論を出すのは保留する。
デジタル世界に巻き込まれ、それを利用しながらも紙の本を手放すことのできない自身と重なる作品。学生時代には編集者を志したこともある身としては、あり得たかもしれない私のもう一つの人生を描いているようで、心に沁みるものだった。
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