アントニー・ビーヴァー「スペイン内戦1936-1939(上)(下)」みすず書房
通史として読みやすく、スペイン戦争の入門としては適している。また、フランコ後に利用できるようになったスペイン国内の諸資料、そして何よりもソ連崩壊後に公開された新史料を利用して、新たな史実が記述されている。
しかし帯にあるような「通説をくつがえす新たな通史」というのは少々誇大広告の気味がある。確かに新史料による新たな史実の発見はあるが、しかしそれらは、従来から共産党支持者以外の立場から主張されていたことを、改めて裏付けたという範囲を超えるものではない。それはそれで価値のあるものであるが。
記述の中心は軍事的動きに置かれ、「戦史」としての性格が強くなってしまっている。そのため戦争に直接かかわること以外の諸党派の政策や、両領域内での人々の生活にはほとんど触れられていない。
一方、著者の立場や姿勢は、一貫して共和派側にもフランコ側にも批判的で、そこから「公平」という評価が出てくるのだろうが、明言してはいないものの、イギリスの「不干渉政策」を消極的ではあっても肯定的に捉えているところに、著者の限界が見てとれる。
本書に意識的な党派性は感じられない。それでもなお、フランコの勝利が共和派の勝利よりはましだったとほのめかしイギリスの政策を正当化するかのような著者の偏向は明らかの存在し、スペイン戦争がいまだにそれを語る人の立場をあぶり出してしまう「現代の課題」であり続けていることを確認させられた。
por Andrés
https://dosperegrinos.net/2011/08/25/%e3%82%a2%e3%83%b3%e3%83%88%e3%83%8b%e3%83%bc%e3%83%bb%e3%83%93%e3%83%bc%e3%83%b4%e3%82%a1%e3%83%bc%e3%80%8c%e3%82%b9%e3%83%9a%e3%82%a4%e3%83%b3%e5%86%85%e6%88%a61936%ef%bc%8d1939%ef%bc%88%e4%b8%8a/書籍・雑誌通史として読みやすく、スペイン戦争の入門としては適している。また、フランコ後に利用できるようになったスペイン国内の諸資料、そして何よりもソ連崩壊後に公開された新史料を利用して、新たな史実が記述されている。 しかし帯にあるような「通説をくつがえす新たな通史」というのは少々誇大広告の気味がある。確かに新史料による新たな史実の発見はあるが、しかしそれらは、従来から共産党支持者以外の立場から主張されていたことを、改めて裏付けたという範囲を超えるものではない。それはそれで価値のあるものであるが。 記述の中心は軍事的動きに置かれ、「戦史」としての性格が強くなってしまっている。そのため戦争に直接かかわること以外の諸党派の政策や、両領域内での人々の生活にはほとんど触れられていない。 一方、著者の立場や姿勢は、一貫して共和派側にもフランコ側にも批判的で、そこから「公平」という評価が出てくるのだろうが、明言してはいないものの、イギリスの「不干渉政策」を消極的ではあっても肯定的に捉えているところに、著者の限界が見てとれる。 本書に意識的な党派性は感じられない。それでもなお、フランコの勝利が共和派の勝利よりはましだったとほのめかしイギリスの政策を正当化するかのような著者の偏向は明らかの存在し、スペイン戦争がいまだにそれを語る人の立場をあぶり出してしまう「現代の課題」であり続けていることを確認させられた。 por AndrésAndres y Amelia SubscriberDos Peregrinos
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