1984年発行の大和書房版『宗教とは何か』を上下二巻に分けて2006年に再発行したもの。

通りがかりの古書店でたまたま目について購入したもので、『マタイ福音書によせてと題して同時に発行されている下巻はまだ入手できていない。

もとはいくつかの雑誌に掲載したものをまとめた評論集で、著者は1冊にまとめるにあたって大幅に加筆改訂したとしているが、やはり書下ろしとは違って「評論集」として論点が分散している感は否めない。

大きくは4部に分かれていて、第1部「宗教を越える」は「宗教批判から現代批判へ」という著者の姿勢がまとめられている。「新約聖書学者」として「宗教学批判」を行なうなかで、常に社会批判を続けてきた経路が明らかになっている。

第2部「異質の世界の無視」は「誤訳」の中に無意識のイデオロギーが露呈するとして、翻訳の抱える問題を聖書の共同訳などを通して論じている。

第3部「イエスを描くという行為」は遠藤周作の『イエスの生涯』『キリストの誕生』2作品を聖書学の立場から批判的に論評している。

最後に附論として荒井献の『イエスとその時代』への書評、ではなく、「書評を書く気がおこらなかった理由」を記したもの。

40年前の著作なので「旧さ」を感じる部分がなくはない。しかし全体としては現在でも十分読むに値するものだ。

田川建三の著作に触れてあらためて感じたのは、文体が吉本隆明と酷似していることだ。内容を考慮せずに文章だけに接していると何方のものか区別がつかないほどだ。久しぶりに読んだので尚更なのかもしれないが。

/images/2024/03/image-jpg.webp/images/2024/03/image-150x150.webpAndrés書籍・雑誌宗教とは何か,宗教批判,田川建三1984年発行の大和書房版『宗教とは何か』を上下二巻に分けて2006年に再発行したもの。 通りがかりの古書店でたまたま目について購入したもので、『マタイ福音書によせて』と題して同時に発行されている下巻はまだ入手できていない。 もとはいくつかの雑誌に掲載したものをまとめた評論集で、著者は1冊にまとめるにあたって大幅に加筆改訂したとしているが、やはり書下ろしとは違って「評論集」として論点が分散している感は否めない。 大きくは4部に分かれていて、第1部「宗教を越える」は「宗教批判から現代批判へ」という著者の姿勢がまとめられている。「新約聖書学者」として「宗教学批判」を行なうなかで、常に社会批判を続けてきた経路が明らかになっている。 第2部「異質の世界の無視」は「誤訳」の中に無意識のイデオロギーが露呈するとして、翻訳の抱える問題を聖書の共同訳などを通して論じている。 第3部「イエスを描くという行為」は遠藤周作の『イエスの生涯』『キリストの誕生』2作品を聖書学の立場から批判的に論評している。 最後に附論として荒井献の『イエスとその時代』への書評、ではなく、「書評を書く気がおこらなかった理由」を記したもの。 40年前の著作なので「旧さ」を感じる部分がなくはない。しかし全体としては現在でも十分読むに値するものだ。 田川建三の著作に触れてあらためて感じたのは、文体が吉本隆明と酷似していることだ。内容を考慮せずに文章だけに接していると何方のものか区別がつかないほどだ。久しぶりに読んだので尚更なのかもしれないが。退職者夫婦の旅と日常(スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・)