あれから９年

９年前の大震災と原発事故。原発事故をめぐって繰り広げられた愚行が、今再び新型コロナウイルス対策で繰り返されている。

福島原発事故で、それまで振りまかれてきた安全神話の実態が悲惨な現実によって暴かれたが、当時はもちろんのこと９年が経った今日に至っても誰一人責任をとっていないし、日本国民の多くも責任を追及していない。それどころか原発事故を招いた最重要責任者の一人である安倍現首相は着々と再稼働への道を歩み、国民の半数は彼を支持している。

現在進行中の新型コロナウイルスの蔓延に関しても、ダイヤモンドプリンセスでの非常識極まりない対応、その後も対策をまともに検討することもなく無為に月日を浪費し、そして根拠なき、あるいは根拠の説明なき「対策」の突然の連発。つまり状況を正確に分析し、経過を真摯に反省し、最善の方途を探り、欠陥があれば謙虚に修正し、口先ではない責任を負うという姿勢が完全に欠如しているのが現政権の姿だ。

通常の枠を２倍にして１時間に亘ったＮＨＫ７時のニュースを、たまたま出先で見た。生活再建では、苦労も多いが頑張っている人々。復興五輪では、聖火リレーに参加する被災地の人々。原発事故では、復旧の進んでいる様子と廃炉作業の課題。震災の教訓では、南海トラフをはじめ各地にある巨大地震の危険。以上４項目にまとめて特集を組んでいたが、ついに東京オリンピックの負の影響や原発事故の責任については一言も触れなかった。第二次大戦について、戦場で悲惨な目に合った、空襲で恐ろしい経験をした、敗戦直後に苦しい生活を強いられたとドラマでもドキュメンタリーでも繰り返されてきたが、戦争責任を追究することはほとんどなかったのと見事なまでの相似形だ。

責任の所在を究明することなく真実をとらえることはできないし、真実を把握することなく将来に経験を生かすこともできない。

私たちは何度同じ過ちを繰り返せば、こうした無責任体制から脱却できるのだろうか。