1936年7月にはじまったスペイン戦争。当時大学生だった著者は翌年末に共和国軍に入隊する。当時では特権的知識階級だった大学生は、士官学校に入る、あるいは後方部隊で活動するといった道もあったが、著者はそうした特権を使うことをあえて避け、一兵卒として入隊する。ちょうどスペイン戦争中盤の激戦だったテルエル攻略戦の最中だったため、一歩間違えば最前線に送られて命を落とした可能性もあったが、幸い彼の配属される予定だった部隊は戦闘で消耗して解体再編されるところで、結局彼が前線に参加するのはしばらく後で、しかもそのころには戦闘は他の地域に移動していて、著者自身は戦闘らしい戦闘に巻き込まれることはなかった。

スペイン戦争関係の作品では、学術的なものも含めて政治的立場が色濃く影響しているものが多い。この著者は、カタルーニャ共和派に位置するようだが、作品自体では政治性をできるだけ避けるようにしている。配属された部隊がアナキスト系だったために、本来の著者の位置からは遠いものだったが、隊内での生活の中で彼らへの親近感を持つようになるが、それでも党派性を帯びることはない。

前線での日常が坦々と描かれ、共和派の敗北に終わった戦争の終結も日常の続きのように語られている。著者は、この作品が前線においても日常においてもどのように生きるべきかを考える契機となることだけを目指しているように思える。戦争を題材とした作品として稀有なものとして価値があるだろう。

/images/2020/10/PSX_20201018_201525-scaled-683x1024.jpg/images/2020/10/PSX_20201018_201525-scaled-150x150.jpgAndrés書籍・雑誌1936年7月にはじまったスペイン戦争。当時大学生だった著者は翌年末に共和国軍に入隊する。当時では特権的知識階級だった大学生は、士官学校に入る、あるいは後方部隊で活動するといった道もあったが、著者はそうした特権を使うことをあえて避け、一兵卒として入隊する。ちょうどスペイン戦争中盤の激戦だったテルエル攻略戦の最中だったため、一歩間違えば最前線に送られて命を落とした可能性もあったが、幸い彼の配属される予定だった部隊は戦闘で消耗して解体再編されるところで、結局彼が前線に参加するのはしばらく後で、しかもそのころには戦闘は他の地域に移動していて、著者自身は戦闘らしい戦闘に巻き込まれることはなかった。 スペイン戦争関係の作品では、学術的なものも含めて政治的立場が色濃く影響しているものが多い。この著者は、カタルーニャ共和派に位置するようだが、作品自体では政治性をできるだけ避けるようにしている。配属された部隊がアナキスト系だったために、本来の著者の位置からは遠いものだったが、隊内での生活の中で彼らへの親近感を持つようになるが、それでも党派性を帯びることはない。 前線での日常が坦々と描かれ、共和派の敗北に終わった戦争の終結も日常の続きのように語られている。著者は、この作品が前線においても日常においてもどのように生きるべきかを考える契機となることだけを目指しているように思える。戦争を題材とした作品として稀有なものとして価値があるだろう。退職者夫婦の旅と日常(スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・)