やっと来た列車に乗り込む。一等コンパートメント。空いていて私達二人で一コンパートメントを独占出来る。喜んで座席を前に引き出し眠ることにする。ところがこの列車、揺れが激しい上に、それはまだ我慢出来るとしても、寒いこと寒いこと。窓もドアも勿論閉め切っているのだが、とにかく寒い。アノラックも着ている。バスタオルを出して掛ける。それでもどう仕様もなく寒い。二人でくっついて暖まろうとするが、全く寒い。ほとんど眠れないままに過ごす。
夜明け、列車内から日の出が見える。山陰から太陽が昇るため、列車の移動につれて何回も日の出が見られる。昨日とはまた違った風景で、一層荒涼とした雰囲気になっている。
マドリッド、Norte 駅に8時頃到着。構内のトイレで洗面をすませ、カフェで朝食。スペインはコーヒーはどんなカフェでも一杯毎に豆をかえて入れてくれるので味はまあ良いのだが、パンが不味い。硬くパサパサで、友人のN夫妻が三日前に焼いたようと言っていたが、これはもう一週間前に焼いてスペインの乾燥した空気の中に放置したごとくである。Norte 駅のカフェではコーヒーとホットドックを食べたが、このホットドックのひどさ。パサパサでボロボロと崩れ落ち、中のソーセージもダメ。ウェイトレスがまた変な感じで、愛想は全くなし。私達の目の前で皿を一枚落として壊すが、その後始末もしようとしない。他のウェイターが仕方なしに始末していたが。客がカフェオレのぬるさに文句を言うと(ミルクを暖めないため)ブスッとして入れかえている。他の従業員も彼女を持てあましている模様。
地下鉄でS0L(プエルタ・デル・ソル)まで行き、少し歩いてマヨール広場へ。そこのツーリスモへ行くが、まだ開いていない(10時から営業)。側のカフェでコーヒーを飲みながら待つ。ガイドブックを見ると宿(Hostal Santa Cruz)の場所が分かる。ツーリスモが開いたので行くと、混雑しているので先に宿に行く。ツインの部屋、シャワーつきで1000ペセタ。一発で決め、部屋に入って着替えてすぐに出、ツーリスモに行って地図をもらい、再びメトロでBANCOに行く。
マドリーの昼は列車の中でとは逆に全く暑い。強烈な日差しの中、石造りの建物の間を歩いて行くと、直射日光と石畳や建物の壁の照り返しで、気が遠くなって行く程。それでも汗はほとんどかかない。やはり乾燥しているせいか。そのため、影に入ると北とは違ってさすがに暑いことは暑いが、東京よりもはるかに涼しく感じられる。
軍隊博物館は入口で手荷物を全て預けさせられてしまい、写真も撮れない。中には様々な武器武具の類が多数展示されている。中世の物が多く、剣、甲胄、そして古い鉄砲。外には古い大砲から最近(第二次大戦頃の物か?)のものまでが建物の反対側に向けて砲列を作っている。しかしその展示物の数の多さに飽き飽きして、まともに見る気が失せてしまう。それにしてもこんなに様々な種類の武器を人間は作り、使い、人を殺し、また自らも殺されてきたことを思うと、一体歴史とは何なのかを、抽象的にではなくより感覚的に考え直させられてしまう。この博物館の中には市民戦争時の展示もあるので行ったわけだが、その数は非常に少なく、マドリー攻防戦の舞台となった大学都市でのフランコ軍の進出の様子を示した模型地図がある程度。フランコの肖像はやたらと沢山あるのだが。そしてもう一つはブランコ首相が暗殺(車ごと爆破)された時に乗っていた自動車が、爆破された跡も生々しく展示されていた。
軍隊博物館を出て、すぐ近くのプラド美術館へ。昼食の時間になっていたが、案内書には館内にレストランがあるとなっているので入館し、見るのは後にしてレストランをさがす。ところがいくらさがしても見つからない。途中、絵をチラッと見ながらだが、約1時間はさがしただろうか。最後に館内の警備員に聞くと、閉まっているとのこと。そう言われてみると館の右半分は全く立ち入れないようになっている。出口で係員に聞くと、一度出ても同じ入場券で又入館出来るとのことで、外に出て近くのカフェで昼食。ここのカフェが又高かった。
プラドに戻り、ゴヤベラスケスグレコを中心に見る。ゴヤはやはり堀田善衛の本を読んでいたこともあり、一番感動出来る。他は宗教画・肖像画が中心であまり好きにはなれない。特に宗教画は一つのパターンの繰り返しか、さもなければちょっと精神に異常を来しているのではないかと思えるようなものが結構多い。例えばキリストの磔刑図で傷口だけをやたらとリアルに描いたもの、あるいはマリア(?)の乳房から乳が一本の筋となってとび、それを男が2メートル程離れた所で口で受けている絵。これなどは全く滑稽で、ひょっとしたらキリスト教(教会)への痛烈な皮肉ではないかと思われる。あるいは他のパターン化した宗教画(家)への皮肉ではないかとも思えるものである。ゴヤはやはり版画(戦争の惨禍)がすばらしい。他の油絵、つまりはパブリックな面での絵にはそれほどの感動は受けない。
プラドの展示はとにかく空調なし、絵と観客を隔てる柵もなし、部屋毎に警備員がいるわけでもなし。絵に手を触れようと思えば簡単に触れられる。これで絵の保存は大丈夫かとこちらが心配になるほど。空調なしは、これも日本と違って乾燥しているからかも知れないが。
プラドを出て(プラドの中も暑かった)銀行はもう閉まっているので、プラドの近くのホテル・セントラルでトラベラーズ・チェックをペセタに換え、歩いてプエルタ・デル・ソルからマヨールに戻る。
オスタルの部屋に帰ってシャワーを浴び、着替えてからマヨール広場に出、レストラン(広場にテーブルを出している)で食事。土曜の夜だからだろうか人が沢山出ていて、どこのレストランもほとんど満席。広場内ではあちこちに似顔絵描きが出、アルミ板で囲った観覧席の中では劇が上演されている。また広場内のレストランやカフェを何組かの流し(プロもいればアマもいる)が回っている。ガスパッチョ(冷たいスープ)がうまい。食後、広場内を少し歩くが、特に面白いこともないので宿に戻って眠る。
Andrésスペイン旅行やっと来た列車に乗り込む。一等コンパートメント。空いていて私達二人で一コンパートメントを独占出来る。喜んで座席を前に引き出し眠ることにする。ところがこの列車、揺れが激しい上に、それはまだ我慢出来るとしても、寒いこと寒いこと。窓もドアも勿論閉め切っているのだが、とにかく寒い。アノラックも着ている。バスタオルを出して掛ける。それでもどう仕様もなく寒い。二人でくっついて暖まろうとするが、全く寒い。ほとんど眠れないままに過ごす。 夜明け、列車内から日の出が見える。山陰から太陽が昇るため、列車の移動につれて何回も日の出が見られる。昨日とはまた違った風景で、一層荒涼とした雰囲気になっている。 マドリッド、Norte 駅に8時頃到着。構内のトイレで洗面をすませ、カフェで朝食。スペインはコーヒーはどんなカフェでも一杯毎に豆をかえて入れてくれるので味はまあ良いのだが、パンが不味い。硬くパサパサで、友人のN夫妻が三日前に焼いたようと言っていたが、これはもう一週間前に焼いてスペインの乾燥した空気の中に放置したごとくである。Norte 駅のカフェではコーヒーとホットドックを食べたが、このホットドックのひどさ。パサパサでボロボロと崩れ落ち、中のソーセージもダメ。ウェイトレスがまた変な感じで、愛想は全くなし。私達の目の前で皿を一枚落として壊すが、その後始末もしようとしない。他のウェイターが仕方なしに始末していたが。客がカフェオレのぬるさに文句を言うと(ミルクを暖めないため)ブスッとして入れかえている。他の従業員も彼女を持てあましている模様。 地下鉄でS0L(プエルタ・デル・ソル)まで行き、少し歩いてマヨール広場へ。そこのツーリスモへ行くが、まだ開いていない(10時から営業)。側のカフェでコーヒーを飲みながら待つ。ガイドブックを見ると宿(Hostal Santa Cruz)の場所が分かる。ツーリスモが開いたので行くと、混雑しているので先に宿に行く。ツインの部屋、シャワーつきで1000ペセタ。一発で決め、部屋に入って着替えてすぐに出、ツーリスモに行って地図をもらい、再びメトロでBANCOに行く。 マドリーの昼は列車の中でとは逆に全く暑い。強烈な日差しの中、石造りの建物の間を歩いて行くと、直射日光と石畳や建物の壁の照り返しで、気が遠くなって行く程。それでも汗はほとんどかかない。やはり乾燥しているせいか。そのため、影に入ると北とは違ってさすがに暑いことは暑いが、東京よりもはるかに涼しく感じられる。 軍隊博物館は入口で手荷物を全て預けさせられてしまい、写真も撮れない。中には様々な武器武具の類が多数展示されている。中世の物が多く、剣、甲胄、そして古い鉄砲。外には古い大砲から最近(第二次大戦頃の物か?)のものまでが建物の反対側に向けて砲列を作っている。しかしその展示物の数の多さに飽き飽きして、まともに見る気が失せてしまう。それにしてもこんなに様々な種類の武器を人間は作り、使い、人を殺し、また自らも殺されてきたことを思うと、一体歴史とは何なのかを、抽象的にではなくより感覚的に考え直させられてしまう。この博物館の中には市民戦争時の展示もあるので行ったわけだが、その数は非常に少なく、マドリー攻防戦の舞台となった大学都市でのフランコ軍の進出の様子を示した模型地図がある程度。フランコの肖像はやたらと沢山あるのだが。そしてもう一つはブランコ首相が暗殺(車ごと爆破)された時に乗っていた自動車が、爆破された跡も生々しく展示されていた。 軍隊博物館を出て、すぐ近くのプラド美術館へ。昼食の時間になっていたが、案内書には館内にレストランがあるとなっているので入館し、見るのは後にしてレストランをさがす。ところがいくらさがしても見つからない。途中、絵をチラッと見ながらだが、約1時間はさがしただろうか。最後に館内の警備員に聞くと、閉まっているとのこと。そう言われてみると館の右半分は全く立ち入れないようになっている。出口で係員に聞くと、一度出ても同じ入場券で又入館出来るとのことで、外に出て近くのカフェで昼食。ここのカフェが又高かった。 プラドに戻り、ゴヤ、ベラスケス、グレコを中心に見る。ゴヤはやはり堀田善衛の本を読んでいたこともあり、一番感動出来る。他は宗教画・肖像画が中心であまり好きにはなれない。特に宗教画は一つのパターンの繰り返しか、さもなければちょっと精神に異常を来しているのではないかと思えるようなものが結構多い。例えばキリストの磔刑図で傷口だけをやたらとリアルに描いたもの、あるいはマリア(?)の乳房から乳が一本の筋となってとび、それを男が2メートル程離れた所で口で受けている絵。これなどは全く滑稽で、ひょっとしたらキリスト教(教会)への痛烈な皮肉ではないかと思われる。あるいは他のパターン化した宗教画(家)への皮肉ではないかとも思えるものである。ゴヤはやはり版画(戦争の惨禍)がすばらしい。他の油絵、つまりはパブリックな面での絵にはそれほどの感動は受けない。 プラドの展示はとにかく空調なし、絵と観客を隔てる柵もなし、部屋毎に警備員がいるわけでもなし。絵に手を触れようと思えば簡単に触れられる。これで絵の保存は大丈夫かとこちらが心配になるほど。空調なしは、これも日本と違って乾燥しているからかも知れないが。 プラドを出て(プラドの中も暑かった)銀行はもう閉まっているので、プラドの近くのホテル・セントラルでトラベラーズ・チェックをペセタに換え、歩いてプエルタ・デル・ソルからマヨールに戻る。 オスタルの部屋に帰ってシャワーを浴び、着替えてからマヨール広場に出、レストラン(広場にテーブルを出している)で食事。土曜の夜だからだろうか人が沢山出ていて、どこのレストランもほとんど満席。広場内ではあちこちに似顔絵描きが出、アルミ板で囲った観覧席の中では劇が上演されている。また広場内のレストランやカフェを何組かの流し(プロもいればアマもいる)が回っている。ガスパッチョ(冷たいスープ)がうまい。食後、広場内を少し歩くが、特に面白いこともないので宿に戻って眠る。退職者夫婦の旅と日常(スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・)