定刻8時20分ごろパリ、アウステルリッツ駅に到着。配偶者に起こされたのか、周りがザワザワしていたためか、とにかく駅に停車して目が覚めてはじめてパリだと分かる。全く一度も目が覚めないとはやはり長旅の疲れか、それとも寝心地が良かったのか。ここでも降車は一番後の方。

1980-08-28 パリ 駅構内 洗面をしようと思って構内トイレに行く。先ず配偶者が行くが、チップが必要だと言ってすぐに戻って来る。それではと私が一フラン持ってトイレに入り顔を洗おうとすると、オバさんが「ムッシュー、ノン…」と言って顔を洗うのは駄目というようなことを言う。そう言われてみると水道は一つしかない。仕方なく何もせずに出る。出てみるとトイレのすぐ外に手洗場があり、そこで若い旅行者が歯を磨いているので、私もそこで洗顔をする。私が済んでから配偶者。洗顔後、配偶者が売店でパンを買って来る。売店で焼いているとのことで、まだほんのり暖かい。構内のベンチでこのパンを食べる。柔らかくて非常に美味しい。高くてもパンだけはパリの(フランスの)ものが良い。これまでのスペインの硬いパン(砂漠に一週間放置した様な代物)と比べると、これを同じ「パン」という言葉で指すことが間違っているような気にまでなる。パリは冷んやりしていて、パンを食べながら通り過ぎる人々を見ていると、ごく一部の旅行者を除いては皆長袖を着ていて、秋の服装をしている。私達もセーターを出して着込む。

先ず宿を決めなければならない。初日にサン・ルイ島を探し回り、結局見付からないで、シテ島にあることの分かった「ヘンリー四世」に行くことにする。メトロに乗ってシテ島へ行く。このメトロはゴムタイヤを使ったもので、車体は小さ目だが新しく清潔で気持が良い。スペインでは地下鉄は自動ドアだったが、パリのは開けるのだけは手動。

1980-08-29 パリ ホテル・アンリ4世ホテル「ヘンリー四世」の住所を探して行くとすぐに見付かる。シテ島のサン・ルイ島とは反対側のポン・ヌフ(新橋)の側で、セーヌには面していないが、ちょっとした静かな公園に面した非常に環境の良い所。入口から狭い階段を昇った二階に受付がある。8月末なのですいていると思ったが、結構客が入っている。しかし午後には空く部屋があるというので、部屋を見せてはもらえないが、ここに決める。

ホテルに荷物を預け、10時頃出て先ずフランに換金しなければならないので銀行を探す。ポン・ヌフを渡り、デパートの側を通って行くが、スペインの町ではすぐに見付かったのに、なかなか銀行がない。やっと見付けて200ドルを換金。

1980-08-30 パリ ルーブル庭園ルーブルへ向かう。門の響きの良い所で今日も学生らしい人がフルートを吹いて金を集めている。ルーブルはやはり混んでいる。入った途端に日本人が多いのが目に付く。入ったのは11時頃か。さすがにルーブルは有名な絵、有名な画家が満ちている。しかしこれだけ多いと一つ一つへの感動が全くなくなってしまう。特に宗教画の類はこれまでにさんざん見せられたのでもう完全に飽き飽きしてしまっていて、ゆっくり見る気にもならない。ほとんどの絵は歩きながらチラチラと見るだけにする。ミロのヴィーナスモナリザは探して見るが、どちらも特に大きな感動はない。古代エジプト部門は少しゆっくり見て回る。ここでは特にルーブルの性格がよく分かる。つまり全世界からの分捕り品の大展示場という性格が。館内のセルフサービスのレストランでの昼食時間も含めて四時間程かかった。しかし勿論一点一点をちゃんと見て回れば一週間や二週間はかかるだろうが。

ルーブルを出てから郵便局へ行き、切手を買って葉書を出し、カフェでコーヒーとケーキ。再びルーブル方向へ戻り、チュイルリー公園の花々の間を歩いてジュ・デュ・ポンへ行く。ここは印象派の絵画を展示している小さな美術館。四時半頃到着。一時間程で閉館なので急いで回る。マネ、モネ、ドガ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン等。配偶者はゴッホを気に入っているが、私はどうも印象派なるものが好きになれない。ここにモネの「水蓮」があるというので探すが、見付からない。これは壁画なので、その場でしか見られないのだが。5時半閉館なのに5時頃から客を出し始め、5時15分には売店も閉められて、本を買おうとするが売ってくれない。

話は前後するが。ジュ・デュ・ポンに入る前に公園の池で、一ヶ月前にも見たヨット遊びを子供達が又やっている。しかしあの時の暑さはもうない。

ジュ・デュ・ポンを出て、ひょっとすると「水蓮」があるかも知れないと思い近くのオランジュリー美術館に行ってみるが、ここは最近ずっと閉館になっている。さし当って諦め、シャンゼリゼをエトワール広場に向かって歩く。とにかく休もうとカフェを探して歩く。途中、映画館があったので、今夜は映画を見ようと探しながら行く。これぞ、という映画はない。エトワールに近いカフェで休憩。

夕食は一番安いレストランでとろうとガイドブックに載っている店を探してワグラム通りから少し折れた所に行くが、そこの住所にはレストランはない。仕方なく近くのイタリアンレストランで定食を食べる。配偶者はここで出たゆで卵のマヨネーズかけが随分気に入った様子。この店は7時半までだと30フラン。ワインを飲んで食事を終え、店を出たのは8時半頃。それから又映画を探してシャンゼリゼを歩くが、どうも特別見たくなるようなものはない。最後はもう何でもよいという気になって単純そうなものを選んで入る。

地下の映画館で、やっている映画は三流だが、館内は清潔で座席も大き目のフカフカで座り心地は大変良い。これなら何時間でも見ていられるような感じ。やっている映画は日本の刑事ドラマと同様のもので、麻薬密造組織を刑事らしくない刑事二人がやっつけるというもの。途中セックスシーンもあるが、ボカシもカットもなくそのまま映している。しかし特にイヤラシイ雰囲気はない。映画が終わって出てみると、同じ館の上階の方でやっているスターウォーズの方にズラリと行列が出来ている。

私達はメトロの入口で写真を撮り、メトロでポン・ヌフまで行き、そこから橋を渡って宿に帰る。ところがホテルの入口はもう閉まっており(23時半頃か)、ブザーを押して開けてもらう。宿の人は眠そうな顔をして出て来るが、気分良くやってくれる。普通はホテル入口の鍵も渡してくれることになっているらしいが、私達は部屋にも入っていなかったのでこんなことになった。預けてあった荷物と鍵を受け取って部屋に行く。四階の道路側。部屋は古く、大きなダブル・ベッドと簡易ベッドが一つ。流しがついているがトイレ、バスはなし。とにかく古びているが、不潔感はない。やたらと棚が沢山取り付けてあり、長期滞在には便利な様子。バスを借りるのはやめて、部屋の流しで身体を拭く。パリは一日中涼しく、しかも乾燥しているのでバスの必要は感じない。眠ったのは1時頃だっただろうか。

Andrésスペイン旅行定刻8時20分ごろパリ、アウステルリッツ駅に到着。配偶者に起こされたのか、周りがザワザワしていたためか、とにかく駅に停車して目が覚めてはじめてパリだと分かる。全く一度も目が覚めないとはやはり長旅の疲れか、それとも寝心地が良かったのか。ここでも降車は一番後の方。洗面をしようと思って構内トイレに行く。先ず配偶者が行くが、チップが必要だと言ってすぐに戻って来る。それではと私が一フラン持ってトイレに入り顔を洗おうとすると、オバさんが「ムッシュー、ノン…」と言って顔を洗うのは駄目というようなことを言う。そう言われてみると水道は一つしかない。仕方なく何もせずに出る。出てみるとトイレのすぐ外に手洗場があり、そこで若い旅行者が歯を磨いているので、私もそこで洗顔をする。私が済んでから配偶者。洗顔後、配偶者が売店でパンを買って来る。売店で焼いているとのことで、まだほんのり暖かい。構内のベンチでこのパンを食べる。柔らかくて非常に美味しい。高くてもパンだけはパリの(フランスの)ものが良い。これまでのスペインの硬いパン(砂漠に一週間放置した様な代物)と比べると、これを同じ「パン」という言葉で指すことが間違っているような気にまでなる。パリは冷んやりしていて、パンを食べながら通り過ぎる人々を見ていると、ごく一部の旅行者を除いては皆長袖を着ていて、秋の服装をしている。私達もセーターを出して着込む。先ず宿を決めなければならない。初日にサン・ルイ島を探し回り、結局見付からないで、シテ島にあることの分かった「ヘンリー四世」に行くことにする。メトロに乗ってシテ島へ行く。このメトロはゴムタイヤを使ったもので、車体は小さ目だが新しく清潔で気持が良い。スペインでは地下鉄は自動ドアだったが、パリのは開けるのだけは手動。ホテル「ヘンリー四世」の住所を探して行くとすぐに見付かる。シテ島のサン・ルイ島とは反対側のポン・ヌフ(新橋)の側で、セーヌには面していないが、ちょっとした静かな公園に面した非常に環境の良い所。入口から狭い階段を昇った二階に受付がある。8月末なのですいていると思ったが、結構客が入っている。しかし午後には空く部屋があるというので、部屋を見せてはもらえないが、ここに決める。ホテルに荷物を預け、10時頃出て先ずフランに換金しなければならないので銀行を探す。ポン・ヌフを渡り、デパートの側を通って行くが、スペインの町ではすぐに見付かったのに、なかなか銀行がない。やっと見付けて200ドルを換金。ルーブルへ向かう。門の響きの良い所で今日も学生らしい人がフルートを吹いて金を集めている。ルーブルはやはり混んでいる。入った途端に日本人が多いのが目に付く。入ったのは11時頃か。さすがにルーブルは有名な絵、有名な画家が満ちている。しかしこれだけ多いと一つ一つへの感動が全くなくなってしまう。特に宗教画の類はこれまでにさんざん見せられたのでもう完全に飽き飽きしてしまっていて、ゆっくり見る気にもならない。ほとんどの絵は歩きながらチラチラと見るだけにする。ミロのヴィーナスとモナリザは探して見るが、どちらも特に大きな感動はない。古代エジプト部門は少しゆっくり見て回る。ここでは特にルーブルの性格がよく分かる。つまり全世界からの分捕り品の大展示場という性格が。館内のセルフサービスのレストランでの昼食時間も含めて四時間程かかった。しかし勿論一点一点をちゃんと見て回れば一週間や二週間はかかるだろうが。ルーブルを出てから郵便局へ行き、切手を買って葉書を出し、カフェでコーヒーとケーキ。再びルーブル方向へ戻り、チュイルリー公園の花々の間を歩いてジュ・デュ・ポンへ行く。ここは印象派の絵画を展示している小さな美術館。四時半頃到着。一時間程で閉館なので急いで回る。マネ、モネ、ドガ、ルノワール、ゴッホ、ゴーギャン等。配偶者はゴッホを気に入っているが、私はどうも印象派なるものが好きになれない。ここにモネの「水蓮」があるというので探すが、見付からない。これは壁画なので、その場でしか見られないのだが。5時半閉館なのに5時頃から客を出し始め、5時15分には売店も閉められて、本を買おうとするが売ってくれない。話は前後するが。ジュ・デュ・ポンに入る前に公園の池で、一ヶ月前にも見たヨット遊びを子供達が又やっている。しかしあの時の暑さはもうない。ジュ・デュ・ポンを出て、ひょっとすると「水蓮」があるかも知れないと思い近くのオランジュリー美術館に行ってみるが、ここは最近ずっと閉館になっている。さし当って諦め、シャンゼリゼをエトワール広場に向かって歩く。とにかく休もうとカフェを探して歩く。途中、映画館があったので、今夜は映画を見ようと探しながら行く。これぞ、という映画はない。エトワールに近いカフェで休憩。夕食は一番安いレストランでとろうとガイドブックに載っている店を探してワグラム通りから少し折れた所に行くが、そこの住所にはレストランはない。仕方なく近くのイタリアンレストランで定食を食べる。配偶者はここで出たゆで卵のマヨネーズかけが随分気に入った様子。この店は7時半までだと30フラン。ワインを飲んで食事を終え、店を出たのは8時半頃。それから又映画を探してシャンゼリゼを歩くが、どうも特別見たくなるようなものはない。最後はもう何でもよいという気になって単純そうなものを選んで入る。地下の映画館で、やっている映画は三流だが、館内は清潔で座席も大き目のフカフカで座り心地は大変良い。これなら何時間でも見ていられるような感じ。やっている映画は日本の刑事ドラマと同様のもので、麻薬密造組織を刑事らしくない刑事二人がやっつけるというもの。途中セックスシーンもあるが、ボカシもカットもなくそのまま映している。しかし特にイヤラシイ雰囲気はない。映画が終わって出てみると、同じ館の上階の方でやっているスターウォーズの方にズラリと行列が出来ている。私達はメトロの入口で写真を撮り、メトロでポン・ヌフまで行き、そこから橋を渡って宿に帰る。ところがホテルの入口はもう閉まっており(23時半頃か)、ブザーを押して開けてもらう。宿の人は眠そうな顔をして出て来るが、気分良くやってくれる。普通はホテル入口の鍵も渡してくれることになっているらしいが、私達は部屋にも入っていなかったのでこんなことになった。預けてあった荷物と鍵を受け取って部屋に行く。四階の道路側。部屋は古く、大きなダブル・ベッドと簡易ベッドが一つ。流しがついているがトイレ、バスはなし。とにかく古びているが、不潔感はない。やたらと棚が沢山取り付けてあり、長期滞在には便利な様子。バスを借りるのはやめて、部屋の流しで身体を拭く。パリは一日中涼しく、しかも乾燥しているのでバスの必要は感じない。眠ったのは1時頃だっただろうか。退職者夫婦の旅と日常(スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・)