現在の日本を理解するうえでキリスト教の理解が欠かせないという立場から、二人の社会学者が対談で「キリスト教入門」を展開した書。従来の「キリスト教入門」が、信者の立場からする宣教の書であるか、客観に徹する故に宗教学的解説の書であるかのどちらかだったように思う。しかしこの対談では二人が、キリスト教を敵視するわけでもなく、突き放して冷たく観察するのでもなく、信仰の内側にのめりこむこともなく、絶妙な距離を保ってキリスト教への理解を深めようとしている。しかも対談であるがゆえに読み易く、難解な用語が避けられているのも「入門」にふさわしい。
一神教では信仰とは神との対話で、不断の神との対話が祈りだ、というのは非常に腑に落ちた。それでも全知全能の神が創ったこの世界がこれほどまでに不完全なのはなぜか、神がヨブに理不尽な試練を与える理由は何か、という疑問は消えない。これらはあくまで人間の立場からの疑問、世界の見え方であって、神の側から見るとこの世界は完全で疑問の余地はないのだという信仰者からの解答があるのだろうが、これでは信じるか信じないかというところに戻ってしまうだけだ。
有意義な部分の多い一冊。ただし現在の日本を理解するためには、まだ途上の一冊でしかないので、続編が期待される。
por Andrés
/images/2017/07/c1c9e6ba747dea8d55b1adfc656a6125-644x1022.jpg/images/2017/07/c1c9e6ba747dea8d55b1adfc656a6125-150x150.jpgAndrés書籍・雑誌現在の日本を理解するうえでキリスト教の理解が欠かせないという立場から、二人の社会学者が対談で「キリスト教入門」を展開した書。従来の「キリスト教入門」が、信者の立場からする宣教の書であるか、客観に徹する故に宗教学的解説の書であるかのどちらかだったように思う。しかしこの対談では二人が、キリスト教を敵視するわけでもなく、突き放して冷たく観察するのでもなく、信仰の内側にのめりこむこともなく、絶妙な距離を保ってキリスト教への理解を深めようとしている。しかも対談であるがゆえに読み易く、難解な用語が避けられているのも「入門」にふさわしい。 一神教では信仰とは神との対話で、不断の神との対話が祈りだ、というのは非常に腑に落ちた。それでも全知全能の神が創ったこの世界がこれほどまでに不完全なのはなぜか、神がヨブに理不尽な試練を与える理由は何か、という疑問は消えない。これらはあくまで人間の立場からの疑問、世界の見え方であって、神の側から見るとこの世界は完全で疑問の余地はないのだという信仰者からの解答があるのだろうが、これでは信じるか信じないかというところに戻ってしまうだけだ。 有意義な部分の多い一冊。ただし現在の日本を理解するためには、まだ途上の一冊でしかないので、続編が期待される。 por Andrés退職者夫婦の旅と日常(スペイン・旅・留学・巡礼・映画・思索・本・・・)